病院のご案内
セルフケアとは、人が生活し、生きていくのに必要な、あらゆる活動を自分の意志で行える能力といわれています。
当院の患者さんの多くは、脳血管障害の後遺症である運動機能障害(麻痺)や高次脳機能障害によって、セルフケア行為に援助が必要となり、成長していく過程で獲得した「食事をする」「トイレに行く」「着替えをする」「お風呂に入る」などの身の回りの行為や、自らの健康管理を再獲得しなければなりません。
そのため、私たち看護師は患者さんや家族の意志を大切にすることを念頭に置き、リハビリテーションによって改善された機能を活用し、再び自分の生活の場で生活できるよう(適応)、セルフケア再獲得に向けた看護を行っています。
また、障害を受け入れ(適応)、自分自身をかけがえのない存在として認識できるように、病気の中にも意味を見出すことできるような看護を目指しています。
副院長 金山萬紀子 / 看護部長 中村真紀
セルフケアの再獲得と適応促進への援助を行い、患者さんと家族の自立を目指した看護を実践します。
看護部の「セルフケアの再獲得と適応促進への援助を行い、患者さんと家族の自立を目指した看護を実践します」という理念を、実践の中で具体的に展開していくために、平成10年からロイ適応看護モデル(The Roy Adaptation Model)を基盤とした看護を実践しています。
当院では、平成17年の10月に電子カルテシステムが導入されましたが、このシステムの看護記録は、ロイ適応看護モデルが基盤となっています。
平成20年9月には、米国ボストンのMassachusetts General Hospitalで開催された第9回RAA Conferenceにおいて私たちの研究発表がAward paperを受賞いたしました。(演題名:"Application of the Roy Adaptation Model in HER in a Japanese Rehabilitation Hospital -The Japan") 当院でロイ適応看護モデルを実践し、電子カルテ記録まで発展させてきたことを背景に現段階での看護介入の評価について報告しました。この研究は、ロイ適応看護モデルを基盤とした電子カルテ記録の開発と研究を長年にわたり実施してきた、聖マリア学院大学大学院の日高艶子教授との共同研究です。本研究の一部は、2009年10月初旬に米国で出版された "The Roy Adaptation Model-Third Edition-" のChapter21に紹介されています。
看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院を修了した後に、専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。専門看護師は、ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することを認められた者をいいます。
当院では、脳卒中看護をサブスペシャリティとする慢性疾患看護専門看護師が1名在籍しています。
リハビリテーション看護では、セルフケアの再構築のために患者さんのフィジカルアセスメント、高次脳機能障害のアセスメントを的確に行い、根拠のある効果的な看護実践が求められます。
リハビリテーション病院の専門看護師として、脳卒中の後遺症によりセルフケア能力が低下した患者さんに対して、入院当日から病棟看護師とともにアセスメントを行い、早期回復できるよう看護介入に取り組んでいます。また、リハビリテーション看護の質の向上のためにスタッフ教育や研究のサポートを行っています。
看護部全体で新人看護師を育てることを基本にしています。
看護師1年目は、看護師としてのキャリアの大切な第1歩です。スタート地点は皆いっしょですが、一人ひとりの成長は違います。そのため、一人ひとりの可能性を大切にし、支援していきたいと思っています。
病院の理念や基本方針、医療倫理など他部署の新人と合同で約1ヶ月の時間をかけ、医療人としての自覚がもてるよう研修を行います。
集合教育または各病棟での看護技術の習得を目指します。
セルフケア介入技術やトランスファー、フィジカルアセスメントなどの基本的な看護技術を習得できるようプログラムを構築しています。
看護理論は、私たちが看護をする上での指針となります。集合教育では概論を学び、受け持ち患者の看護展開ができるまで、一人ひとりの理解度にあわせて行います。
リハビリテーション看護の専門性を習得するために、専門看護師が中心となり教育を行っています。運動機能障害や高次脳機能障害、摂食嚥下障害をもつ患者さんのセルフケア再獲得に向けた看護について事例を用いながらわかりやすく学ぶことが出来ます。また、他領域の専門職からの講義もあります。
近隣の大学病院の外部新人研修に参加し、当院では学べない急性期の看護技術を経験することができます。
著者 | 論文題名 | 誌名 |
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松尾佐智子 | 脳卒中による重度障害患者の家庭復帰実現のための主介護者への指導 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,42-47,2011 |
中村真紀 1) 西川健一 3) |
ソマトパラフレニアによる摂食セルフケア不足への看護介入 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,48-53,2011 |
戸嶋早織 1) 日高艶子 2) |
役割と環境設定を活用して左半側空間への探索行動を可能にした事例 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,61-65,2011 |
林 由香 | 観念失行患者の歯磨き行為の行程に沿った看護介入 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,73-80,2011 |
吉村綾子 | 感覚性失語と失行を伴った患者の服薬自己管理に向けた介入 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,87-93,2011 |
中島峰子 | 前頭葉損傷患者の行為の誤りへの気づきを促す看護介入-動作誘導の口頭指示から鏡の活用- | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,94-100,2011 |
石井成美 1) 日高艶子 2) |
抑制障害による更衣セルフケア不足への看護介入 | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,101-108,2011 |
金山萬紀子 | 脳卒中患者の転倒・転落事故はどうすれば減らせるのか | リハビリナース別冊 セルフケア再構築の成功事例から学ぶ!脳卒中リハビリテーション看護Case Study,116-125,2011 |
谷口 藍 味園小夜子 |
摂食時の覚醒維持を目指した看護介入の一考察 -食前に歯磨き刺激を用いることの効果- | 第23回 日本リハビリテーション看護学会 学術大会集録,38-40,2011 |
石井成美 1) 日高艶子 2) 小浜さつき 2) 後藤美香 1) 安本沙織 1) 中村真紀 1) |
自己尊重の低下をきたした脳卒中患者の看護介入の検討 -主婦役割を活用した介入の試み- | 第23回 日本リハビリテーション看護学会 学術大会集録,50-53,2011 |
清祐洋子 1) 日高艶子 2) 俣木優美 1) 金山萬紀子 1) |
脳卒中患者の不安に関する一考察 -入院直後と1ヵ月後の不安の表出の変化から- | 第23回 日本リハビリテーション看護学会 学術大会集録,80-83,2011 |
※1) 誠愛リハビリテーション病院,2) 聖マリア学院大学看護学部,3) 公立玉名中央病院
演者名 | 演題名 | 学会名 |
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中村真紀 | 2025年問題を踏まえて今後のチーム医療の展望 | 第20回日本臨床脳神経外科学会,広島,7 |
吉村綾子 | 特別企画シンポジウム「Evidence-Based Rehabilitation Nursing」 半側空間無視の無視側への探索行動を促す壁を用いた環境設定の効果 | リハビリテーション・ケア合同研究大会,久留米,2017,10 |
戸嶋早織 | リハビリテーション研修会「食べるを支えていくためい、私たち専門職はこう関わる」 EST(Eat Swallow Team)における看護師の役割について | 平成29年度第1回リハビリテーション研究会,福岡,2017,10 |
森田麻友美 1) 吉村綾子 1) 日高艶子 2) 小浜さつき 2) |
複数の高次脳機能障害により更衣セルフケア不足をきたした患者に対する看護介入- | 第29回日本リハビリテーション看護学会学術大会,東京,2017,11 |
正司貴子 1) 川﨑裕子 1) 日高艶子 1) 吉村綾子 1) |
注意障害により摂食セルフケア不足と診断された患者の看護介入-個室環境と嗜好品を取り入れた介入の効果- | 第29回日本リハビリテーション看護学会学術大会,東京,2017,11 |
小浜さつき 2) 日高艶子 2) 吉村綾子 1) 金山萬紀子 1) |
自発性低下の看護介入プログラムに関する研究-ゲームを活用した介入の効果-(第2報) | 第37回日本看護科学学会学術集会,仙台,2017,12 |
※1) 誠愛リハビリテーション病院、2) 聖マリア学院大学看護学部