お知らせ
上杉謙信と脳卒中
2009.03.02 [ 井林院長MonthlyTale ]
090302 3月朝礼訓示 #0903
3月はいよいよ年度末でもうすぐ本当の春がきますが、三寒四温の時期でもあり、まだまだ気温は変動し易く寒い日もありますので注意しましょう。昨日のNHK大河ドラマ「天地人」でも、丁度3月初めに越後の春日山城で陣を張っていた「義」の戦国武将である上杉謙信が、「利」で有名な戦国覇者の織田信長との合戦を目前にして、脳卒中で倒れ亡くなるシーンが映し出されていました。
1578年3月9日の早朝(交感神経やレニン-アンジオテンシン系が賦活化され、一日の中でも血管障害を起こし易い時間帯)に、謙信は厠(トイレ)に行った直後に、突然意識障害を生じ左片麻痺となり4日後に直江兼続らに看取られ息を引き取りました。享年49歳、梅干しを酒のつまみに毎晩のように直径10cmほどもある大きな春日杯で酒を嗜んでいたのは有名な話ですが、日々のストレスは尋常ではなかったでしょうし、今で言うメタボには見えませんが、塩分を好み晩酌の習慣のあるヒトが寒い早朝に息むなど、血圧が急上昇する最悪な条件が重なっての脳卒中発作だったと思われます — 当院ホームページの第1回勉強会スライド4枚目にもこのことを載せていますのでご笑覧下さい。
http://www.seiai-riha.com/topics_i/080708%20innaibenkyou02.pdf
脳卒中急性期には専門医のいる脳卒中専門病院に運んでもらい、ケースにもよりますが、3時間以内の脳梗塞にはt-PAという血栓(血の固まり)を溶かす薬と超早期からのリハビリテーションが重要です。最近の我国の脳卒中データバンク2009の成績では、発症3日以内の脳卒中患者の約半数にリハビリテーションが開始されているそうです。その後、回復期から慢性期へとリハの継続がなされるわけですが、謙信の時代にかかるシステムが整っていて、ヘリコプターで搬送されたのち適切な治療がなされていたら、日本の歴史も少しは変わっていたのでしょうか。21世紀の現在、国の決めた医療行政は、少なくとも脳卒中リハに関しては必ずしも「義」を重んじた政策とはいえず、多くの病院としても「利」に走るつもりは毛頭ないにしろ、世の中の仕組みに沿ってそれに合わせて進めざるを得ない部分があり、実に悩ましいところです。
本年度、当院での1年間を振り返り、理事長、院長、管理部長ほかのソフト面に引き続き、病院内部の幾つかの部署のハード面が変革され、少しずつ病院の舵取り方向が変わってきたように感じますが、まだまだこれから院内そして対外的な仕組みやシステムの改善が待たれるところです。第2回目の病院機能評価にもどうやら合格させて戴いたようですので、今後は来年度に向けて、皆さんの知恵を出し合って、現行体制の中で出来る限り正しい行いを守れる「義と愛」の誠愛リハビリテーション病院を目指したいと思っております。