お知らせ
情報公開とFacebook
2011.03.07 [ 井林院長MonthlyTale ]
110307 3月朝礼訓示 #1103
3月に入りましたが、まだ肌寒い日が続きます。今日は、“disclosure”についての話をします。英語の“dis-”は否定の接頭語であり、例えばdisable, disagree, discharge, discover, disuseなど良く見かける単語が辞書にも沢山載っている筈です、、、disclose, disclosureもその中の一つです。
当院では、医師をはじめ英語論文を読む機会の多いリハ部や看護部の一部の方はご存知かと思いますが、論文の最後に文献とともに記載されている「Disclosure;研究成果に関する個人的な寄付金や研究資金などの有無に関する公開/開示」、すなわちこの研究に付いては特別な贔屓や癒着などは無いですよといった正直な透明化の姿勢を表します。最近では有名雑誌に様々なエビデンスが次々と発表され、当然乍らその研究に携わった先生や研究者の名前がずらりと著者名に連なり、また同時に決まってこのdisclosureが当たり前のように文末に記載されています。Disclosureさえキチンと呈示されていれば、読者の大半が殆ど何の疑問も感じることなく、その論文を丸ごと信用し認めてしまう傾向にあった訳ですが、中にはキナ臭い開示内容であったり、あるいは相変わらず一部は隠されたままの実態が暴露される例も出始めてきているようです。
さて、このところ俄にFacebookというサイトが流行っているのをご存知でしょうか。ハーバード大学の賢い学生が、講義内容や試験のお知らせなどの通達toolとして考案したもので、友達や同僚、過去を含めて親しい知り合いの人たちと交流を深めることのできるソーシャルユーティリティネットワークです。世界では今や恐らく6〜7億人以上の人々が登録しており、日本でも約150万人(総人口のまだ1%強程度)の利用者数がいるのではないかと言われています。先日登録してみましたら、小学校や中学校時代の懐かしい友人や九大の後輩、台湾や韓国など海外でお世話になった医療関係の方々が、いとも簡単に顔写真とともに見つかりました。原則は、実名と顔写真を添付してdisclosureし登録するシステムなので、本来素見しやイタズラなどでは利用できないシステムですが、将来のことは今の世の中ゆえにどのように展開して行くのか、素人の自分には全く想像がつきません。然し乍ら、一般人の一つのFacebookやTwitter を利用した画像投稿が、この1−2ヵ月でチュニジア、エジプト、リビアなどアラブ諸国の反政府革命へと進展しているのを目の当たりにしますと、過去長期にわたって続いてきた腐り切った独裁主義の世の中を、斯くも短期間に変えてしまう大きな原動力の切っ掛けtoolになったことは間違いないと言えましょう。
いくら器用に水面下で工作し隠し通しても、相撲の八百長の発端や入学試験のYahoo知恵袋の匿名投稿、さらには外務大臣の不正献金などのように、とくに悪事については数日単位で簡単に発覚してしまう時代です。個人的な全ての事項をdisclosureすべく、良いことも悪いことも正直に一つ残らず公開することが、果たして絶対に必要かつ良いことなのかと言えば、一般社会に生きる普通の人々においては必ずしも然に非ずかも知れません。ただ、我々の如く病院内に身を置く医療従事者としては、矢張り勤勉に余裕を持って、常に優しくdisclosureの精神で透明化を目指し勤務すべきと考えます。ただ忘れてならないのは、患者さんがガッカリされるような事項に付いては、自分たちの知恵袋(例え、ベストアンサーでなくても良いのですから)を頼りに、小さな「嘘も方便」的な気持ちはいつも心の片隅に大切に持っておくべきだろうと思うのです。