お知らせ
ほー
2018.09.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
今月のタイトルは「ほー」です。何のことやらさっぱりわからない?でしょうね。でもこのたった二文字で、「あらゆる」と言っても良いほど多様な人間の感情が表現できるということに、みなさん気づいていますか?
驚き、意外、興味、無関心、共感、喜び、不満、不快、拒否•••どんな感情だってこの二文字に込めることができます。それを可能にするのは声の大きさであり、高さであり、抑揚であり、音の伸ばし方であり、響きであり、文章では決して再現できないものです。
ある精神科医は患者さんとの受け答えのほとんどが「ほー」だったそうです。家に帰っても色々な言い方で「ほー」を繰り返し練習するので、たいそう奥さんの不興を買ったという話がおまけについています。それでも立派な精神科医として尊敬を集めていたようですから、「ほー」も使い方によっては大した威力を発揮するということでしょう。
人間の発する言葉は、言うまでもなくその内容が重要です。しかし医療•介護の現場においては、その内容と同じか、ときにはそれ以上に声の作る響き(あるいは声が作り出す場•空間とでも言いましょうか)が大切だと思います。語る内容よりも、その響きの方がずっと雄弁に語り手の心情を表すこともあります。とてもとても辛いときに、慰めの言葉を 1000 回聞かされるより、「そうなの?そう?辛いですよね」と優しい響きで包んでもらった方がどれだけ痛みが癒されるか、経験したことがある方も少なくないでしょう。しかし、我々は案外、自分の声が作り出す世界に無頓着です。
自分の声の響きにもっと注意を向けてみませんか?美しい言葉に美しい響き。これらを併せ持つ人は患者さんにとっては「傍に居て欲しい人」であり、それ 以外の人とのつながりにおいても「一緒に居たい人」と思わせる魅力を放つように思います。そこに素敵な表情が加われば、もう鬼に金棒です。
今日から私も鏡を見ながら「ほー」の練習をしましょう。こっそりやりますが、例えその現場に居合わせても変な奴だと思われないように、先手を打ちました!。