良い病院にするための必要条件は色々とありますが、中でも重要な要件の一つが「働きやすい職場である」ことだと思います。職員の満足なくして、患者さんに満足を提供することは決してできないからです。また、職場の人間関係が職員の退職理由のかなりの部分を占めていることも見逃せません。ですから「働きやすい職場」を作ることは、私の中でもとりわけ重要な任務です。
おそらく組織の管理の立場にある人は誰でも、「働きやすい職場」を作りたいと思っていることでしょう。しかし、現実にはそれほど簡単なことではありません。正直者が馬鹿を見るような組織にならないよう、個々人の働きが正当に評価されるような組織を作るために、今後も必要な改革を行っていくつもりです。
一方、皆さんにも協力してほしいことがあります。それは「部下・後輩を大切に」ということです。単純なこと、簡単なことのように見えてなかなか難しい目標です。
部下のいる人は部下を統率して仕事を進めることももちろん大切ですが、それと同じかあるいはそれ以上に、部下を育てるということが重要な任務です。部下の悩みや意見に耳を傾けること、その上で正しい決断を下すこと、部下の誤りを教え諭すこと、場合によっては身を挺して部下を守ること、全て部下を持つ人の責任です。部下のいない人も、1 人でも後輩がいる限り、その後輩に対して同じ責任を負っています。前述の行動を日々繰り返すことによって、部下や後輩が育っていき、そこで初めて上司や先輩の役割を果たしたことになるのだと思います。
「金を残すは下、業（仕事）を残すは中、人を残すは上」というのは後藤新平の言葉です（福沢諭吉との説もある）。人を育てて残すというのは、職場はもとより社会に対する大きな貢献となりますが、自分にとってもかけがえのない財産となります。
良い職場、働きやすい職場でなければ人は育ちません。人を育てる土壌としてまず、「部下・後輩を大切に」していただきたいと思います。