お知らせ
誠愛支援システムの構築
2019.12.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
誠愛リハビリテーション病院の向かう先(1)
~誠愛支援システムの構築~
令和元年もあと 1 か月足らずを残すばかりとなりました。この 1 年間、本院はさらに成長を続けてきたと感じています。院内を歩いていて、職員の皆さんが一生懸命働いている姿を見るたびに、この病院は職員の頑張りで成り立っているんだなあと思っています。1 年間本当にご苦労様でした。
病院をよくするのは、誰かひとりの力ではできません。みんなが力を合わせて同じ方向に向かわなければ、組織は動きません。ですから職員に病院の向かう方向性を示すことは私の責務であると考えています。今回と次回の 2 回に分けて、誠愛リハビリテーション病院が向かっていこうとしている方向やゴールについてお話ししたいと思います。
当院はリハビリテーションを専門に提供する病院なので、患者さんの機能回復に力を入れるのは当然のことです。現在は各部署がそれぞれの技能や特色を生かして、患者さんの機能回復を助ける仕事をしています。その結果は患者さんによっては十分満足できるものではないかもしれませんが、現代の医療レベルという観点から見ると、水準以上の実績を残しており、有難いことに周囲の住民や医療関係者からも相応の評価を受けています。しかし、それで満足していてよいかという問題意識をもつことは重要です。
歩いて退院できるまでに回復した患者さんが、その後、自宅でも歩けているのでしょうか?転倒して大腿骨を骨折した方は、退院後危なくない生活を送れているのでしょうか?残念ながら脳血管障害や骨折の再発のために再入院となる方は少なくありません。再発をゼロにすることはできないにしても、少しでもゼロに使づけるための努力が、どの程度入院中に行われているかを考えてみてください。多くの患者さんは、数か月から半年に渡って入院リハビリを継続しています。この長い時間の間に我々が提供できることはもっともっとあるはずです。
現在のシステムでは、各部署がそれぞれのやり方で再発防止や健康づくりの指導を行っています。しかし、部署ごとの縦割りでは抜けや重複が出る可能性があります。また、明文化・体系化されていない場合は、担当者の熱意や力量によって患者が受けるサービスが変わってしまいます。そのような不備が起こらないようにするためには、一人の患者さんについて各部署が介入するプログラムを明文化して、関わるスタッフ全員がそれを共有し、相互に意見を述べあうというシステムが必要になります。
このようなシステムを仮に「誠愛支援システム」と名付けましょう。「こんな長ったらしい名前は不便だ」という方は、英語の頭文字を取ってトリプル S、または SSS (Seiai supporting system)と呼んでもらっても結構です。
例えば 85 歳の女性 A さんが、骨粗鬆症に伴う大腿骨頸部骨折で入院してきたとしましょう。医師は A さんの骨密度や椎体骨折の既往をレントゲンで確認し、FRAX というツールを用いて将来の骨折リスクを算出します。それに基づいて最良の薬物療法を開始します。セラピストは機能回復のリハビリに加え て、A さんに特有の転倒に関する問題点を抽出し、そこに重点を置いた転倒予防訓練を行います。また転倒した時に骨折しにくい身のこなし方なども訓練するとよいかもしれません。比較的体力のある A さんに対して、訓練の空き時間には看護師がセラピストと相談しながら、ベッドサイドで安全にできる運動を促し、指導します。ゴールは運動習慣の獲得です。栄養士は骨を強くするための献立作成と栄養指導を、薬剤師は転倒しやすい薬に関する助言をすることができるでしょう。MSW は A さんの退院後の生活設計をすると同時に、退院後はモニターを行って、問題があれば担当者にフィードバックします。他にもいろいろあるでしょうが、これらをいつ、誰が、何を実行するかをチャート上で見える化し、スタッフ全員が協力・助言し合いながら A さんに関わっていく、そんなイメージです。
このようなシステムを作り上げるために、各部署でどのような関わりができるかを考え、基本となるプログラムを作成して行かなければなりません。生易しい仕事ではありませんが、是非ともみんなの力を集結して、他のどこにも負けない誠愛の誇りとなるようなシステムを作り上げましょう。どうか皆さんの力を貸してください。