お知らせ
2020年ボーナスショック
2020.07.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
Monthly tale は当院のホームページにも掲載しており、院外の方々の目にも触れるため、給与や賞与に直接関係する話は意識的に避けてきました。しかし、今夏のボーナスの減額は、誠愛リハビリテーション病院の組織としての在り方を皆さんと共に考える良い機会でもあるので、敢えて話題として取り上げることにしました。
大辞林によれば、ボーナスとは「もとは,能率給制度において標準以上の成果を挙げた労働者に対して支払われた賃金の割増し分」であったそうです。法律的に言えば、ボーナスは業績に応じて企業が支給するものとなっていますので、給与と異なり、一定額が保証されるものでもありません。
とはいえ、ローンの支払い、子供の教育費、貯蓄など、ボーナスを当てに生活設計を立てている職員は少なくないでしょう。そこを考えると、何とか従来と同じように支給したいと思うのは当然です。しかし、「無い袖は振れない」のです。新型コロナウイルスの影響で、経営状態が急激に悪化している現状では、ボーナスとして支給できるお金が十分ないのです。「病院には今までの貯蓄があるじゃないか」と言われるかもしれませんが、貯蓄は今回のコロナのような予期せぬ経営打撃、災害、将来の設備・機器整備、病院や施設の建て替えなどに充てるもので、決して潤沢にあるとは言えません(事実、いくばくかの貯えがあったからこそ、一人の職員の解雇もなく、給料の減額もなく今日までやってこれたのです)。経営幹部が職員の人気取りのために「無い袖を振る」ようなことをすれば、雇用の確保や確実な給与支払いなど、職場としての根幹が揺るぎます。そのようなつけを、将来、この病院を担う人たちに負の遺産として残すわけには行かないのです。
新型コロナのために仕事量が増えた方もおられるでしょう。しかしそれでも病院としての収入が落ちている以上、ボーナスは減らさざるを得ません。否、それだけ頑張ってくれたから、今回の額が支給できると考えてください。何も対策を講じず、従来通りの仕事をしていたら、今回のボーナスはなかったかもしれません。さらに言えば、この文章を読んだ外部の方で、「ボーナスがでるなんて羨ましい」と思う人は決して少なくない筈です。ボーナスどころか、収入がほとんどないという人もたくさんいるのもご存知でしょう。
私たち経営に関わる者は、職員の皆さんに対して何一つやましいことはしていないつもりです。職員の一時的な歓心を買うために乱脈経営をするようなことは絶対にあってはならないと思っていますし、病院のお金を少しでも無駄遣いしないように慎ましく仕事をしています(私は当院に赴任した時、公用車が質素であることに驚き、公用車の運転手さんがいないことに驚き、また公用車を経営トップが滅多に使わないことにも驚きました。この規模の病院ではあまり例が多くないと思います)。そして今回のボーナスに関わる措置は、全職員が、公平な比率のもとに痛みを分かち合う仕組みになっています。
一つだけ皆さんに説明しておきたいことがあります。本来、6 月のボーナス は昨年 10 月から本年 3 月までの業績をもとに決定するものです。その意味からいえば、今回の減額は不当だということになるでしょう。それは正論です。しかし、コロナの第二波が押し寄せる兆しが見える今、冬のボーナスがひょっとしたらゼロにまで落ち込むこともありうると覚悟しておかなければなりません。も ちろん、そのようなことがないように、様々な経営上の工夫を次々に実行に移していますが、物事を楽観的に見すぎると後で大変な目に遭います。今回の支給額が従来より減っているのは、冬のボーナスが少しでも高い水準に維持できるように、極端な落ち込みがないようにという考えに基づくものです。その分を病院が(ましては経営幹部が)ちゃっかり着服しようなどとは夢にも考えていません。
私たちは職員の皆さんの雇用を守り続ける所存です。給与をきちんと払えるようにあらゆる経営努力を続けます。一見厳しい姿勢に見えるかもしれませんが、職員にいい顔ばかり見せて後に禍根を残すようなことはしてはならないと覚悟しています。しかし、職員の皆さんの理解と協力がなければ、全て絵に描いた餅です。皆で力と知恵を出し合って、冬のボーナスで一緒に笑おうではありませんか。
長尾哲彦