お知らせ
希望の種
2022.05.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
新型コロナウイルスは言葉では尽くせない被害を人類にもたらしています。社会機能を麻痺させ、経済的困窮を生んだことはもとより、何よりもかけがえのない多くの人命を奪い去ったことは、人類史上長く語り継がれるに違いありません。しかし人類が凄いのは、どのように劣悪な状況であれ、それに適応して新しい生き方を生み出すことができるところにあると思います。
この誠愛リハビリテーション病院においても、感染対策委員会が中心になって(とくに委員長の石松副院長の八面六臂の活躍で)、感染防止活動を 2 年以上にわたって毎日繰り広げてくれています。そのおかげで、小さなクラスターは生じたものの、最短、最小限のダメージで収束させることができました。ただ、委員会が掲げる対策がどんなに優れたものであっても、組織の構成員一人一人にその内容が知らされ、忠実に実行されないことには対策が無いも同然です。その意味では、皆さんの日頃の協力とプロとしての心構えに深く敬意を表する次第です。他方、大きな健康被害には至らなかったとはいえ、多大なご迷惑をおかけした患者の皆様には、組織の責任者として深くお詫び申し上げます。
実際、新型コロナウイルスが院内に入り込んで、対応を誤れば大流行してもおかしくなかったというケースは幾度もありました。しかしその都度水際で食い止めることができたのは、迅速な職員の連携と部署を超えた協力態勢があったために他ならないと考えています。新型コロナウイルス感染症という未曽有の大ピンチに直面して、我々ははからずも一体感を高め、お互いを尊重し、協力し合うという行動がとれるようになりました。ピンチこそ最大のチャンスとはよく言われますが、まさに大きな危機をチャンスに変えることができたと思っています。これを機会に、部署間の壁を越えたオール誠愛の精神で、患者の皆さんを守り抜く医療文化を揺るぎないものにしたいと心を引き締めています。
新型コロナだけでなく、現代の社会には難問が山積みされています。しかし困ったことの裏側や片隅には、必ず将来に向けた希望の種が転がっていると思います。その種はとても小さくて見つけるのが難しいかもしれません。それでも誰かがそれを発見し、別の誰かと一緒に土に植えて、もっと多くの人が水を与え、最後はみんながその成長に携わるようになれば、最初の困難を乗り越えて前へ進む力になると信じています。
今は小さいけれど、いつかはきっと花開くという希望の種を、病に苦しむ患者さんたちに届けられるような病院にしたいと願っています。そんな思いで、私も新しく入院してこられた患者さんの元へ足を運んでいます。皆さんも小さな希望の種を患者さんたちに届けて、一緒に育ててあげてください。
長尾哲彦