お知らせ
人は何のために働くのか?
2022.09.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
今回の monthly tale では、人間が働くということについても考えを巡らせ、そこから我々誠愛リハビリテーション病院が目指すべきものをみんなで再確認したいと思います。
そこで改めてお尋ねしますが、皆さんは何のために働いているのでしょうか?「そんなん決まっとるやん。お金を稼がないと食べていけないからでしょ!」という答えがおそらく一番多いと思います。そしてこの答えが多くの人にとっての正解であろうかと思います。しかし、質問に対する答えは一つとは限りません。「それはもちろんあるけど、もっと大切なこともあるよね」と思いながら私の話を聞いている人も少なくないのではないでしょうか。
人間以外の生き物も働いています。蟻や蜂は来る日も来る日も狩りをして獲物をせっせと巣に運び込みます。外敵が現れたら命を賭けて巣を守ろうとします。ライオンは群れで狩りをして飢えを凌ぎます。どちらも自分や家族の生存のためですが、実は種の保存という見えない大きな力に突き動かされています。人間も生き物である以上、自己の生存、種の保存という本能に繰られて、遺伝子に組み込まれた目的を達成しようとします。しかし、人間が他の動物と異なるのは、労働に他の意味が付与されていることが少なくないという点です。
皆さんは3人のレンガ職人の話をご存知でしょうか?旅人が汗まみれになっ てレンガを積んできる 3 人の職人に出会い、なぜそのような仕事をしているかと尋ねたところ、一人目の男は「親方に命令されたから仕方ない」と答え、二人目は「家族にパンを食べさせなきゃならんからね」と笑い、第三の職人は「町の人々が心のよりどころにする大聖堂を建てるためさ」と胸を張ったというあの話ですね。イソップ寓話が原作と言われていますが、どうもそうではないようです。同じ「生きるため」に働いていても、そこには3つの段階があるということをこの話は教えてくれます。第一段階では、生存そのものが労働の動機になっています。第二段階になると「身近な誰かのため」という意味が付加されます。そして第三段階では社会や人類全体に対する愛や貢献という目的が見て取れます。どのレンガ職人が誇りと喜びをもって日々汗を流しているのかは説明するまでもないでしょう。
世の中にはいろいろな職業がありますが、医療・介護職というのは、最も労働の意味付けがしやすい職業の一つであろうかと思います。病める人を癒すという行為は、社会貢献の最たるものではないでしょうか。そのような職業に就いているというのは、幸せなことだと私は思います。仕事に誇りを持つためには「いい仕事」をしなければなりませんし、「いい仕事」のためには自己研鑽が求められます。そのようにして高まった医療・介護人は必ず病める人たちを幸せにしていくと信じています。職員みんなが、3番目のレンガ職人のような気持ちで毎日の仕事に向かい合ってくれることが、院長としての熱い願いであり、皆さんがそう思えるような病院にしたいと常々考えています。
長尾哲彦