お知らせ
地域に開かれた病院
2023.09.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
皆さんは医療機関と地域社会との関係について考えたことがあるでしょう か?健康に関する心配事を何でも相談できるかかりつけ医は、地域医療の最前線にあり、住民との接点が最も多い医療機関と言えるでしょう。また急性期病院も、急病の時に昼夜関係なく診てもらえるという意味で、なくてはならないものと地域住民に認められていると思います。これに対して私たちの誠愛リハビリテーション病院はどうでしょうか?存在自体は知っているけれど、多くの住民にとって“自分自身にはあまり関係ない病院”と捉えられてはいないでしょうか?敢えて言えば、“自分の親や祖父母などが病気になった時にお世話になる病院”という位置づけかもしれません。これはリハビリテーション病院という性質上、仕方ないことなのでしょうか?いや、そのような立場にあるからこそ、我々は地域社会に溶け込む努力を怠ってはならないと思います。それはなぜでしょうか?
急性期病院については、住民の心の中である程度のイメージがあって、いざという時はどこで診てもらいたいという大雑把な意向を持っている人も少なくないでしょう。ところがリハビリテーション病院をあらかじめ決めているという人は、(以前に何らかの関わりを持ったことがある人を除けば)少数派に属すると思われます。多くの住民は、ある日突然脳卒中や骨折に見舞われてアタフタし、気が付いたら急性期病院の主治医にリハビリテーション病院への転院を勧められて途方に暮れるというパターンに嵌るのではないでしょうか。その時に誠愛リハビリテーションという名前は聞いたことがあるがそれ以上は何も知らないというのと、それまでに何らかの接点があって、医療に対する病院の姿勢や職員の仕事ぶりについてある程度の知識があるというのでは、大きな差があります。ましてや親しい人から、「リハビリするなら誠愛さんが絶対お勧..め!」と言ってもらえたら、どれほど安心でしょう。万一何かあっても、あの誠愛があるから大丈夫という安心感を地域住民に持ってもらうことこそ、地域で生きる病院の存在意義に直結します。
では地域に開かれた病院にするために、私たちに必要なのは何でしょうか?一言で言えば、地域住民との接点をなるべく多く持つように努めるということです。実を言えば、今までもそのような活動は地道に続けてきています。通所リハビリテーションや訪問看護・訪問リハビリテーションはわかりやすい例ですね。それ以外にも地域の公民館などでの健康講座や体操の指導なども重要な活動です。私も高齢者向けの医療講演のお呼びが掛かれば可能な限り出向くようにしていますし、同じ理由でラジオ番組も続けています。コロナで中止を強いられてしまいましたが、誠愛フェスタもそろそろ再開できればいいなと考えています。他にも皆さんの知恵を出して、もっともっと地域との結びつきを強いものにしていきたいですね。
ここで私が新しい地域貢献として考えていることをお知らせしたいと思います。それはワクチン接種への積極的介入です。これまでもインフルエンザや新型コロナワクチンでは地域医療の一端を担ってきましたが、今後は子宮頸がんワクチンや高齢者の帯状疱疹ワクチンにも力を入れようと計画しています。因みに子宮頸がんで毎年 3000 人近くの 30~40 代の女性が命を落としています。見方を変えれば、子宮頸がんのために母親を失う幼い子供たちが大勢生み出されているとも言えます(子宮頸がんがマザーキラーと呼ばれる所以です)。ワクチン接種が適正に施行されれば、子宮頸がんに罹患する女性はほとんどいなくなると言われています。地域社会に留まらず、我が国の社会全体に対する貢献という面から見ても、極めて大切な地域医療機関としての使命だと考えています。まずは職員の娘さん達が将来、罹らずに済むはずのがんに罹ることがないように、ワクチン接種を受けることができる体制を院内で立ち上げるつもりです。
地域に必要のない施設は淘汰されていきます。どんなに立派なレストランができても、その地域の住民の支持がなければ潰れて行くのと同じです。地域住民が「我々の街には誠愛さんがあるからね」と胸を張ってくれるように、病院を挙げて地域に貢献していきましょう。
長尾哲彦