病院に限らず組織は職員の皆さんの日々の頑張りで回っています。当院が社会の中で役割を果たして行けているのも皆さんのおかげと感謝しています。職員一人一人の働きが大切なのは言うまでもないことですが、当院のように 300 名以上の人間が一緒に働いている職場では、個々のパーフォーマンスだけでなく、集団としてのアウトプットを可能な限り大きくする必要があります。いつも言うように、職員がそれぞれに自分の好き勝手な方向に綱を引くのと、目標を定めて同じ方向に綱を引くのとでは、大きな違いが出るのは言うまでもありませんね。その目標を定めること、目標に達成するためにどのように綱を引けばよいかを考えて指示を出すことが組織の中では絶対に必要です。そこを誤ると職員個々の頑張りが全く無駄に終わることにもなりかねません。今年は診療報酬改定が行われたので、とくに細やかな目標設定が必要な年です。各部署で様々な対応を考えていただいていますが、その結果、仕事の形が大きく変わることも少なくないと思います。変化に対応することは大変ですが、柔軟に対応できる組織だけが生き残っていける世の中です。よろしくご対応をお願いいたします。
このように医療機関として求められるレベルが日々高くなり、それに応じて変わらざるを得ない状況の中で、私は職員の皆さんに改めて二つのことを約束します。
第一は皆さんが個々の能力を最大限に発揮できる環境を作る努力を惜しまないことです。さらに言えば、個々のパーフォーマンスを封じ込める各種のハラスメントを病院から一掃することです。セクハラ、パワハラ、モラハラなど色々なハラスメントが問題になっていますが、最近は投書で相談を受けることが以前より格段に少なくなっています（というより、なくなったと言うべきでしょう）。それは投書という非常手段に訴えなくても、組織の仕組みの中できちんと対応できていることの表れだと自負していますが、もしそうでないと思う方は遠慮なく相談してください。中立的な立場でヒアリングをして対策を考えます。必要と判断した場合は、第三者によるチームを作って検討することも考えています。投書という手段を取るときは、個人が攻撃されることがないように最大限の配慮をしますので、是非とも記名してください。無記名ではその後の連絡が取れず、ヒアリングの結果をフィードバックすることも叶わず、対策が立てられないことの方が多いのです（実際、当事者の話はたいてい食い違うので、双方の言い分を聞かないと対策が立てられないのです）。
ハラスメントの中で最近多いのは、カスタマーハラスメントと呼ばれるタイプのものです。患者を大切にするという点において、私は当院のスタッフを誇りに思っていますが、患者さんサイドからの不当なハラスメントや暴力には毅然として対応しなければならないと考えています。にも拘らず、現場では職員がけがをしたり心を病んだりすることが少なからず起こっています。そのような事態になる前に、少しでも不当な言動が見られたときは上司に報告をして当面の対応を定め、職場が一致してそれに従って動いてください。それでも改善が見られない場合は病院組織として対応しますので、いつまでも我慢するようなことがないようにしてください。
第二の約束も皆さんを守りますという内容です。認知症の患者さんの拘束は頭の痛い問題です。拘束は可能な限り避けるべきことはみんな分かっていますが、拘束しないために事故が発生するリスクを考えると、行わざるを得ないのも理解できます。しかしそれで仕方ないと諦めてしまったり、拘束が日常の風景になってしまったりしてはなりません。1分 1 秒でも拘束を外せないかという意識を持ち続けることが重要だと思います。これから ＤＣＴ（認知症ケアチーム）が中心になって拘束解除に取り組んでくれることになっています。他の施設での実践や学びなども取り入れ、当院独自のルールを作って、それに沿って拘束を減らす方向に動きだそうとしています。もしそこで不幸にして事故が起こったとしても、ルールに則ってやっている限りは、個々の職員を責めたりすることはありません。仮にその日の担当職員が矢面に立たされるようなことがあったとしても、病院が組織として対応し、個々の職員はしっかり守ります。ですからどうか安心して、新しい明日に向けてチャレンジしてください。患者の皆さんのため、1mm でも前進する意識を持ちましょう。ひいてはそれが職員の幸せになるものと信じています。

長尾 哲彦