お知らせ
新病棟に移転して
2024.12.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
昨日、無事に新病棟への移転が終わりました。このあと、さらに新病院の完全グランドオープンに向けて建築は続きますが、患者の皆さんに、より快適な入院生活を送っていただくための新病棟が稼働し始めたのは、本当に嬉しいことです。新病棟を立ち上げることができたのは、もちろん職員の皆さんの頑張りがあったからではありますが、長い間建築資金をコツコツと貯め続けてくれた私たちの先輩職員にも感謝の思いを向けなければなりません。
また、誠愛リハビリテーション病院を選んで利用してくださった患者の皆様、ご紹介をくださった地域の医療介護施設の皆様など、多くの方々のお陰で今日の日を迎えることができたという事実は忘れないようにしたいと思います。そして今日からは、私たちの後輩職員のために、頑張らなければなりません。
さて、新しい病棟の立ち上げに際し、本院が今後向かうべき将来像を皆さんと共有したいと思います。本院は全ての病床が回復期リハビリテーションに特化したリハビリテーション専門病院であることは言うまでもありませんが、その中でも脳卒中に伴う機能障害にこれからも力を入れていきます。脳卒中の機能障害には運動障害、感覚障害、嚥下障害、言語障害など様々あり、それらのすべてに対応しなければなりませんが、とくに失語、失認、失行、注意障害、抑制障害などの高次脳機能障害に対するリハビリテーションではどこにも負けないという病院にしたい。高次脳機能障害は麻痺などと違ってちょっと見にはわかりにくい障害ですが、患者さんたちの生活の質を大きく損なうものです。高次脳機能障害を正しく診断してこれに対処することは簡単ではありません。簡単でないからこそ、見逃さずにしっかり治療することが大切です。そして入院中に再発予防の患者指導を行うことも、これまで以上に力を入れなければならないでしょう。
第二に大切にしたいのはご高齢の方の骨折、とくに大腿骨近位部骨折です。高齢者人口の増加に伴い、大腿骨近位部骨折が増えているのを、日常の臨床中でもひしひしと感じます。
一度大腿骨近位部骨折を起こすと、反対側の大腿骨骨折を来す方が多く、その後の生存期間が短くなると言われています。再度、歩いていただけるようにリハビリテーションを行うことは勿論ですが、ここでも再骨折しないような予防的患者指導をしっかり行うことが、リハビリテーション病院としての使命であると考えています。
もちろん、脳卒中と大腿骨近位部骨折以外にもリハビリテーションを必要とされる方はたくさんおられます。呼吸器、循環器、がんなど、新しい時代に即したリハビリテーションニーズに応えていくことも、今後本院に求められることでしょう。
そして最後に強調したいのが心のリハビリテーションです。ある日突然、脳卒中や骨折を患って、今まで普通にできていたこと、例えば排泄や食事が自分一人では儘ならなくなるというような状況を想像してみてください。本院に入院してこられた方々は、これから一生、このような障害を抱えて生きていかなければならないのではないかという絶望や不安に捉われています。生きる望みさえ失っておられる方もいるでしょう。リハビリテーションをどんなに頑張っても障害が残る方もおられます。そのような方々に、もう一度頑張って生きようと思える心の力や生きる希望を与えずして、リハビリテーション医療と言えるでしょうか。見える形にするのが難しい目標ですが、だからこそしっかり心にとめてそこへ向かうことが大切だと思います。
以上纏めると、脳卒中、骨折を診療の中心に据えつつ、それ以外のリハビリテーションにも応じることができるような体制を作っていくこと、再発しないための指導を徹底すること、そして患者の皆さんに生きる力や希望を持っていただくこと、これらを誠愛リハビリテーション病院の目指す将来像と考えていただければと思います。そしてこれを機に、病院理念も「誠愛なる医療」から「誠愛なるリハビリテーション医療」に変更します。目標の達成は容易なことではないとは思いますが、決意をもってやれば必ず達成できます。全職員の気持ちを一つにして、今日から新しいスタートを切りましょう。
長尾 哲彦