福岡県大野城市にある回復期リハビリテーションに特化したリハビリテーション専門病院

誠愛リハビリテーション病院

   

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番外編:新人ナースの素朴な疑問に頭を捻る

2025.04.23 [ 長尾院長MonthlyTale ]

 4月は出会いの季節です。希望に胸を膨らませた新人職員がやってきます。今年も看護部には11人の若者たちが入職してきました。私は毎年、バイタルサイン(血圧や脈や呼吸など人体から発せられる基本的な健康情報)の講義を受け持っています。今年も講義の後で、新人たちからとても若さにあふれた質問をいただいたので、「う~ん、う~ん」と頭をひねりながら回答を作りました。新人ナースと院長との間で交わされるほんわかしたやり取りですが、院外の方にも知っていただきたいと思い、掲載することにしました。

                                         長尾哲彦

Q:回復期の医療スタッフとして、何を意識して患者さんと関わっていますか?

A:病気やけがで辛い時を送っている患者さんたちに、希望をプレゼントすることを意識しています。当院入院当初は、急な病気やけがで意気消沈している方がほとんどです。そんな方々にはリハビリテーションで機能回復の余地があること、そして我々がそのお手伝いをすることを伝えて、将来への希望を取り戻していただきます。一方、リハビリテーションを頑張っても、後遺症が残る人も少なくありません。例え後遺症と一緒に生きていくことになっても、前向きになれるような希望を持っていただくことがとても大切と考えています。

Q:血圧の左右差があるとき、どちらを基準に観察すればよいのですか?

A:高い血圧がその方の血圧です。低い方の血圧は測定部位より心臓に近いどこかで、血管が細くなったり詰まったりしていると考えます(動脈硬化、血管の炎症、外部からの圧迫などが原因)。つまり低い方の血圧はその方の本来の血圧ではないということです。

Q:バイタルサイン測定に際して呼吸音も聴きなさいと習いましたたが、どのような時に呼吸音や心音の聴診が必要ですか?

A:バイタルサインを測定して、「何か変」と思ったときに聴診は必要です。「何か変」と思った次に、何を考えるかで聴診器の使い方が変わります。例えば、体温がいつもより高く、呼吸数や脈拍数が増えていたら、肺炎を疑って肺の呼吸音を聴診します。注射をした5分後に蕁麻疹が出始め、血圧が低下していて苦しそうなら、アナフィラキシーショックを疑って気道狭窄音がないか喉元を聴診します。バイタルサイン単独でなく、患者さんの訴えや異常が起こった状況を総合して、何を疑うかが決まれば、自然と何をすべきかが決まります。

Q:採血など穿刺のコツを教えてください。

A:上手な人のやり方を必死で見ること。そしてそれをもとに自分でやってみること。その繰り返しが上達の秘訣だと思います。

Q:患者さんと対面したときに気を付けていることは?

A:その患者さんが何を求めているかに気を配るようにしています。自分が良かれと思っていても、患者さんにとっては迷惑ということもあります。その時々の患者さんの願いに沿う医療を提供することを基本としていますが、認知症の患者さんの場合など、医療の常識が患者さんの願いと一致しないことも多いのが現状です。そのようなときはしっかり悩んで自分なりの考えを導き、その上で先輩や上司に相談すると良いでしょう。

Q:脳神経を学ぶにあたり、必ず学ぶべきことは何でしょう?

A:脳神経というのは嗅神経から始まって舌下神経で終わる12対の脳神経のことでしょうか?それとも神経学一般に関することでしょうか?多分、後者だと思うのでそれを前提にお答えします。神経学は覚えることが非常に多く、これを極めることはとても大変です。また、神経学のどこが特に大切ということもありません。ですから、最初はあまり細部にこだわらず、人体の神経の働きを大枠で捉えることを意識してください。例えば、「運動神経は大脳の前頭葉の運動野の神経に始まり、延髄で交差して反対側を下降し、脊髄で末梢神経にバトンを渡し、末梢運動神経が筋肉を動かす」という感じです。そして自分で得た知識を担当になった患者さんの症状と照らし合わせてください。脳卒中患者さんの症状を詳しく見ていると、神経の仕組みや働きが理解しやすいと思います。

Q:患者さんと信頼関係を築けるか不安ですが、大切なことはありますか?

A:誰でも最初はとても不安です。魔法の言葉は「誠」と「愛」だと思って取り組んでみてください。誠実に患者さんに向き合うこと、嘘偽りのない心で向き合うこと、相手の幸せを願う気持ち(愛)を持って向き合うこと、これができれば、大丈夫です。最初はうまくいかないこともあるかもしれません。でも、これを続けていれば必ず患者さんに信頼される看護師になれます。尊敬できる先輩が見つかったら、その人を良く観察しましょう。きっと「誠」と「愛」を実践しているはずです。

Q:疾患を理解していくために何から勉強を始めれば良いでしょうか?脳は仕組みが難しいので。

A:勉強しなければならないことはたくさんあるので、何から始めても良いと思います。まずは自分が一番力を入れて勉強する内容を決めましょう。そしてその内容について、まずは1年間しっかり勉強を続けましょう。神経学でも良いし、排せつ介助法でも良いし、人間の心についてでも良いと思います。もちろん、バイタルサインでもOK!それを中心に据えつつ、そこから派生した内容についてすそ野を広げていけばよいのではないでしょうか?神経の勉強法については別項で解説したので参考にしてください。

Q:病棟で男性看護師は一人かもしれません。うまくやっていくコツはありますか?

A:対人関係が必要になる仕事をうまくやるには、まずは相手を知ることが大切だと思います。女性と男性の間には考え方や感じ方に違いもあるので、女性が嫌がることは何か、喜ぶことは何かを把握して、それを行動に反映させることは大事だと思います。ただ、女性も男性も同じ人間ですので、人としての基本的なところは共通項がたくさんあります。「人」を知るために、たくさんの良い友人を持ち、自分が目標とする人を見定め、良い本を読んで自分自身を成長させることが一番大切だと思います。

Q:医師と看護師が近い関係であると良い医療が提供できると思います。どうすれば交流や関係性が深まるでしょうか?

A:前項の男女間の問題と同様、まずは人としての自分を磨くことによって、相手からも認められる存在になることが重要ではないかと思います。看護師と医師は最も緊密に連携すべきパートナーですので、医師に信頼される看護師を目指してください。職業人としても人間としても魅力的な看護師は、医師にとってもかけがえのない存在です。ただ、医師に限らず色々なタイプの人がいて、対応に困ることもあるでしょう。そんな時は迷わず先輩や上司に相談することが大切です。

Q:学生の頃、街中で倒れている人を見ても対応ができなかった。看護師になって急変患者に冷静に対応するにはどうすればよいでしょう?

A:これはある程度の場数を踏む必要あります(要するに経験が必要)。ただ、いつ何時そのような状況に遭遇してもある程度の対応ができるよう、普段から救急対応の基本を勉強し、頭の中で繰り返しシミュレーションすることは必要です。新人の間は、自分が中心となって対応しなければならないことはあまりないと思うので、先輩たちの救急対応をしっかり見て学んでください。

Q:疾患を勉強する以外に、今の時期は何を勉強したらよいですか?

A:他の項でもふれましたが、医療のことに限らず、人間としての成長を後押しできるものであればなんでもよいので、興味のあることに取り組んでみてよいと思います。良い小説を読んだり、映画を見たりすることも、人間という複雑な対象を理解する上で有用だと思います。心理学や宗教も人を知る上では大切でしょう。もちろん、もっと実践的に神経学、運動器学、老年看護学などに力を入れるのも良いと思います。何を選ぶかもあなたの人間力です。

Q:患者さんと関わるうえでコミュニケーションも大事だと思いますが、他に大事にしていること、心がけていることはありますか?

A:自分の持っている知識や技能を惜しみなく提供して、「あなたと一緒に歩いていきますよ」というメッセージを、言葉だけでなく、全ての言動をもって相手に伝えるよう心がけています。

Q:咳嗽があるときの呼吸数はどのように測ると良いでしょう?

A:咳があるときには呼吸数は測定できません。咳が落ち着くまで待つしかないでしょう。例えば睡眠中に咳がひどくなるという人もいますが、逆に少なくなる人もいます。その人の咳のパターンを把握して、咳のない状況を探すようにしましょう。

Q:バイタルサインの測定に拒否を示す患者への対応の工夫を教えてください。

A:その時にバイタルサインを測定することが絶対的に必要でなければ、無理強いをしないことが一番大切だと思います。本当にバイタルサインが必要な状況下で、その測定を拒否するような患者さんはほとんどいないはずです。時間をおいて落ち着いたらまた優しく声掛けしてみましょう。ルーチーン業務でやらねばならないと決まっていることでも、その場の状況に応じて判断できるようになるといいですね。

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