お知らせ
物騒ですが、ぶっ壊してみませんか?
2026.11.04 [ 長尾院長MonthlyTale ]
4月から始まったこの年度も、気がつけば折り返し点を過ぎています。新人の皆さんも仕事に慣れてきて、戦力として活躍しておられることと思います。一方で、仕事場や仕事の内容に馴染めず、日々、つらい思いをしている職員もいるかもしれません。そのような方は是非とも上司に相談してください。きっと、親身になって相談にのってくれると思います。
皆さんはアポトーシスという現象をご存知でしょうか。これは細胞が死んでいく形態での一つです。細胞が死ぬのはどんな時かというと、一つは寿命を迎えた時、2つ目は病気やケガなどによって破壊された時、そして3つ目がこのアポトーシスです。寿命が来たわけでもなく、外部から破壊されたわけでもないのに、細胞が自らプログラムして、自身の寿命を終えるという死に方です。ちょっと聞くと細胞の自殺のようなものですが、後から説明するように、人間の自殺とは根本的に異なるものです。
もう少し詳しく説明しましょう。病気や外力のために、細胞は死ななかったものの、傷ついてしまった状態を思い浮かべてみてください。とくに遺伝子に傷が入ってしまった場合には、そのまま放置すると、将来、癌が発生するなど体全体に大きな問題を引き起こす可能性があります。そこでその細胞は、自らの命と引き換えに体全体を守ろうとするかのように死んでいくのです。また、臓器を作る過程でも、初期に必要だった細胞は後に不要になり、アポトーシスで死んでいきます。このように、アポトーシスは将来の生命維持のために自らを破壊して行くという合理的な過程です。ここが人の自殺とは、根本的に違うところですね。似たような例は意外に身近にあったりもします。4年余りにわたる工事の末、ようやく完成した当院の新病棟建設も、古い病棟を壊すことによって、初めて成しえたものです。歳をとって増えてくる白髪も、悪性黒色腫という悪性度の高い癌を防ぐために、体が自らメラニン細胞を破壊した結果であるという説もあります。
これらの例でわかるように、以前からあるものを破壊するという行為は、時に、将来のためになくてはならないもののようです。私たちの仕事もそうではないでしょうか。世の中の変化につれて、日々、やるべきことは増える一方です。そこは皆さんの頑張りで対応してきてくれたと思いますが、頑張りにも限度というものがあります。ICT化も必要でしょう。しかし、旧来あるものをそのまま引きずりながら、新しい仕事をその上に積み上げていくというのは、いずれ破綻が来ます。どこかで、思い切って切り捨てる勇気も必要です。もちろん、従来してきた仕事は必要性があるからこそやってきたわけで、そんなに簡単にやめられるわけではないというのもよくわかります。しかし、よくよく考えてみると、実は惰性でやっているという仕事は少なくないはずです。スタッフの一人ひとりが業務の意味を考えながら仕事をすることで、仕事の優先順位というものが見えてくるのではないでしょうか。
医療に関する仕事、とくに患者さんのケアについては、どこまでやってもこれで十分という際限がありません。これに対して、スタッフのマンパワーには限りがあります。したがって従来からある仕事や考え方を一度破壊して、優先順位の高い仕事からやっていくという業務の再構築が求められている時代だと思います。アイディアは現場から生まれてくることが多いので、スタッフの皆さんからどしどし意見が出てくることを望みます。管理者の皆さんは、それをうまく取捨選択して、より良い業務体制に再構築してください。このような努力を経ることによって、同じ頑張りでも、より大きな成果につながるのでしょう。そんなスクラップ・アンド・ビルドを繰り返すことによって、当院の新しい伝統が生まれ、育まれることを期待しています。

