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人に伝えるのは難しい
2021.09.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]
私は仕事柄、人から報告や依頼を受けることが少なくありません。そこでいつも感じるのが、他人に「何か」を伝えることの難しさです。全く同じ内容の報告でも、10 人の人に報告してもらうと 10 通りの異なった内容になります。短いものもあれば長いものもあります。聴いていてすっと頭に入ってくるものもあれば、どこまで行っても要点が見えない報告もあります。では、報告の良し悪しは何で決まるのでしょう?
報告には二つの相反する要素があります。第一は必要にして十分な情報が含まれているということ。そして第二は簡潔であることです。必要な情報をしっかり盛り込もうとするとどうしても長い報告になってしまいますし、簡潔な報告を第一に心がけると重要な情報が漏れてしまうという結果になりがちです。
そこで解りやすい報告をする人を分析してみると、次のような特徴があることに気づきます。
1.報告の目的が初めからはっきりしている。
単なる報告なのか、診察を依頼しているのか、指示を要求しているのか、相手の意図が不明のまま報告を聞き続けるのは、行き先がわからない車に乗せられているようで落ち着かないし、何に最大の注意を向けるべきかもわかりません。話の冒頭に「報告です」とか「診察依頼です」などと明示するといいですね。
2.必ずしも時系列で話をしない。
報告の主眼である出来事や状況について語る前に、そこに至るまでの経過を時系列で説明する人は多く、それが最もわかりやすい報告となることもあります。しかし場合によっては、一生懸命注意を向けて聴いていたけどそれは本題ではなくて、集中力が切れる頃にようやく本題に入るという報告も少なくありません。時間経過にそって説明する必要があるかどうかはよく考えてみてください。意外にばっさり切っても大丈夫なことは多いようです。例えば、「診察依頼です。83 歳女性、脳梗塞後遺症のリハビリのため入院している方ですが、15 分前に転倒しました。自覚症状も観察上も特に問題はありませんが、確認の診察をお願いします」で十分です。
3.少し情報は少な目で短い
わかりやすい人の話は幹の部分に関する情報がしっかりしています。逆に言えば枝葉を切り取っているので、ときには情報不足のこともあります。でもそれは後から尋ねれば済むことです。少し足りないくらいの情報を短時間で伝えた方が人には伝わりやすいようです。
報告の上手い人はいつ聴いてもわかりやすい報告をするし、その逆も然りですので、「必要十分な情報」と「簡潔さ」という両者のバランスのとり方はどうやら人によってだいたい決まっているのでしょう。何ごともそうですが、報告の上手い人は日頃から練習をしているようです。報告の電話を掛ける前に、頭の中で「これとこれとこれをこんな順番で言う!」という予行演習を普段からやっていると、そのような時間がないときにぶっつけ本番でやっても良質な報告ができるようになってくるものと思われます。それは日頃から頭の整理の仕方を訓練している結果、ついてくるものなのでしょう。
報告の良し悪しは仕事場だけで発揮されるものではありません。日常生活の中でも、自分の思いをどうやって人に伝えるかはとても大切なことですね。人に思いや考えを伝えるのが上手い人は、きっと「素敵な人」と周囲から見られると思いますよ。
長尾哲彦