福岡県大野城市にある回復期リハビリテーションに特化したリハビリテーション専門病院

誠愛リハビリテーション病院

   

お知らせ

「患者第一の医療」というけれど

2023.10.01 [ 長尾院長MonthlyTale ]

誠愛リハビリテーション病院では「患者第一の医療」をみんなの共通の目標にして仕事をしています。これは当院だけに限ったことではなく、医療機関である以上、全ての組織でそうあるべきであることは今更言うまでもありませ ん。私がこの当たり前すぎる程当たり前な姿勢を強調しているのは、「患者第一の医療」というのは、それほど簡単なことではない、いやむしろ考えれば考えるほど悩みの深いものであると思うからです。皆さんも患者さんのためと思って提案したことが、病院の都合で却下されたと感じた経験はきっとあると思います。それらの全てが、純粋に病院の都合で却下されたとすれば由々しきことですが、医療現場ではそれほど単純に白か黒かで割り切ることができない事例が多いのも実情です。
身近な例を挙げれば、コロナ禍の中での外泊や面会はどうでしょう?「それは感染防止が優先だから制限は仕方ないでしょう」という人が大部分だと思います。しかし、流行の谷間の時期や、現在のような with corona の時期に入ってからはどうでしょう?「患者第一」と「感染防止」がせめぎ合って、みんなが納得できるような方針は決めにくいと感じます。
以前に経験したケースでは、親御さんが入院するにあたって、ご家族がケアの時間や方法について細かくスケジュールを定め、それに沿ってやってほしいという要望がありました。これも「患者第一」ならご希望に沿うように病棟業務を調整するということになります。しかし、病棟業務の再編はかなりの労力を要するものですし、仕事の手順や人が大きく変わることで事故が起こりやすくなることもあるでしょう。さらに一番の問題はほかの患者さんたちとの平等性が保てるかどうかです。もしその患者さんにご家族が希望するような手厚いケアを提供するのであれば、他の患者さんにも同じレベルの医療・介護を提供しなければなりません。そのためには病棟の人員を増やす必要が出てきます。他にも同じように悩ましい例は山ほどあります。患者さんのことを考えた上で、もっと快適に過ごしていただくための工夫を凝らすことは絶対に必要です。ただ、その時に考えなければならないことが二つあります。
一つは組織運営上の支障です。運営上の支障というと病院が勝手に決めた都合をどうにか変更すれば良いじゃないかと考えるかもしれませんが、そう簡単ではありません。組織の運営は合理的かつ過誤がないようにと組み立てられています。いくら一人の患者さんのためになることであっても、それが運営方法の大きな変更を迫るものであれば、結局は他の患者さんに迷惑がかかることになってしまいます。それでは「患者第一の医療」とは言えなくなってしまいます。
第二は平等性の担保であります。ある患者さんのためになることが、他の患者さんとの間に著しい不平等を起こすようでは困ります。同じサービスをほかの患者さんに対しても提供できるかどうかは常に考えておかなければなりません。
そう考えていくと、「患者第一」というのはそんなに簡単にできることではないと思ってきませんか?その通りだと思います。だから多くの医療機関では「患者第一」の精神そのものが知らず知らずのうちに薄れていくのだと私は思っています。しかしそこで諦めるのは並みの組織です。口で言うほど簡単ではないからこそ、いつも「患者第一」の気持ちで全ての患者と接し、自分の手の届く範囲の優しさや親切で「患者第一の医療」を実践していかなければならないと思うのです。「患者第一の医療」は決して高級なアメニティや自由な院内生活を提供するだけではなく、むしろ職員一人一人の一挙一動にこそ深く根を下ろしているべきものだと思います。その意識と実践の積み重ねの上に、大きな変革をともなった改善が次々に花を開かせて行くのではないでしょうか?
こういう私自身もまだまだ思いが足りていないと思うので、皆さんと一緒に「患者第一の医療」をこれからも見つめ続けていきたいと思っています。

長尾哲彦

誠愛リハビリテーション病院

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