お知らせ
絆の大切さ
2011.06.01 [ 井林院長MonthlyTale ]
110601 6月朝礼訓示 #1106
まだ還暦前とは言いながら、足腰や感性が見かけ上健常なうちにフェルメールの原画を一度は直に観てみたいとの衝動から、4月末からの連休はオランダ/ベルギーの旅にでかけ、ついでにゴッホ、レンブラント、ルーベンスらの絵画やRoyal Delft陶芸に触れて参りました。さらに、日本には大変馴染み深いシーボルト博士の生家や、世界で初めてという修道院隣接の病院跡地の博物館なども訪れました。大震災後間もない時期なのでキャンセルも多く、もとよりこの時期ですから成立しなければしないで仕方ないとの気持ちで、ガイドブックすら読んでおりませんでしたが、現地での連日快晴の申し分ない天候と美しい中世の町並み、一面色彩鮮やかで正に見頃のチューリップ畑や風車の風景を目の当たりにしますと、それまでの鬱々とした気分は綺麗に一掃され、とても清々しい充実した気分になれました(写真は5月度のTale参照)。帰国翌日の5/6にはフラフラで病院に出勤致しましたが、時差ぼけも覚めやらぬ5月の第2週 末には、今度は韓国脳卒中学会の招聘によりソウルを訪れ、1泊した翌早朝にはトンボ帰りで帰国、仁川から(福岡には戻らず)そのまま中部国際空港に向い、夕方から春日井市で連日の講演をこなし、第3週末は徳島鳴門市に飛んでインドネシアの神経内科の先生方とround tableの勉強会、、、と言う訳で、当院に赴任して4年目を迎えるのですが、理事長や医局の先生方その他多くのスタッフの仲間に支えられ、大学勤務時代とあまり変わらぬ自由奔放な日々を過ごしております。家族を含め、自分を取り巻くありとあらゆる方々に感謝するばかりです。 さて、自分勝手にそうこうしている間にも、東北大災害の爪痕や福島原発事故のリーダーの見えない後手後手のニュースが次第に正確に伝わるようになり、テレビや新聞その他の報道、あるいは被災地の検死に訪れた同僚医師らの赤裸々な手記や話を見聞きするにつけ、311に flash- backし改めて大自然に対する脅威や被害者への哀悼の意が募るばかりで、平穏な西日本地域に住んでいて申し訳ないといった感情を覚えることが少なくありません。一方、この年末には例年のように名取市の東南部に位置する仙台空港を訪れ、東北大学病院の先生方やCRCの方々と元気に班会議で再会できることを待ち望んでいる自分も此処に居る訳で、人間は前向きに一つひとつ自分の信念に基づいて、後ろはなるだけ振り返らず、只管前から迫り来るdutyをこなして生きていくしかないのだと、日々思うのであります(何やら格好つけて聞こえますね、ご容赦下さい)。この2ヵ月半は、とくに東北の美酒や名産物を仕入れたり、今まで以上に経済効果を狙って出来る範囲で自分なりに消費を試みたり、一方で自宅はもとより病院での積極的な節電に協力したりといったことくらいしかできておりませんが、今後とも年単位の長期的スパンで役立てることがないかを皆でよく考え模索し続けることが重要と考えております。
全国的にみても、311以前は自分のためにという価値観でしたが、311以後は人のためにという購買動機が入って来たのは今までになかったことだそうです。そして、平素から要らぬものは片付けて身軽にしておこうという考え(断捨離)が主流となり、分譲住宅から賃貸へという動きすらも出ているようです。人々の心が「物」から「心」へさらに「絆の大切さ」へと変わってきているのは今の国の姿として良い傾向であろうと思います。福翁自伝の富国強兵ではありませんが、定職のない目標を見失いがちの、しかし力の漲っている多くの若者に対し、国を挙げての東北地方復興大改造計画(?)の有給職に就いて働けるような仕組みをつくれば、心身ともにこの日本国を従来よりも素晴らしい方向に牽引し復活して行けそうに思うのですが、、、。